「薄毛改善のためにいろんな方法を試したけれど効果が出なかった」
「AGAの治療では薄毛回復までに時間がかかる」
といった悩みをお持ちの薄毛の方は、即効性のある方法として「植毛ってどうなんだろう?」と思ったこともあるのではないでしょうか?
植毛は、昔からCMなどで頻繁に宣伝されているように知名度の高い薄毛改善の方法です。
しかし、有名なわりに具体的にどうやって植毛するのかを知っている方は多くないでしょう。
失敗やリスクはあるのか気になっている方も多いはずですので、ここでは、植毛の基本的な知識と植毛による薄毛改善のメリットとデメリットをお伝えします。
この記事を書いたのは?
毛髪診断士 佐渡山宗平と申します。
私も若いころから薄毛が気になり、そのおかげでさまざまな薄毛改善方法を試しました。
植毛にも早くから注目していましたが、昨今、進化が著しい植毛技術には驚いています。
実際、植毛によって多くの方が薄毛の悩みから解放されていますが、植毛にもいくつかのデメリットがあることを忘れてはなりません。
そこで、実際に「植毛ってどうだろう?」と気になっている方のために価値ある情報を提供いたします。
植毛の種類
植毛とは、文字通り頭皮に毛を植え込む方法のことです。
頭皮の気になる部分に穴を開けて直接毛を植え込む手術ですので、医療行為に当たります。
植毛の方法には、以下の2種類があります。
- 自分の髪の毛を使う自毛植毛
- 合成繊維などの人工毛を使う人工毛植毛
両者の違いを説明していきましょう。
① 自毛植毛
本人の髪の毛を、薄毛の部分に移植する方法が自毛植毛 です。
現在の植毛手術のほとんどがこの自毛植毛と言ってよいでしょう。
ただ、「薄毛の自分の毛を移植して薄毛が解消されるのか」という素朴な疑問が浮かぶのは当然です。
しかし、はっきりと効果が認められる方法と言ってよいでしょう。
というのも、AGAの場合、ホルモンの作用によって薄毛となるのですが、薄毛となる部分はおもに前頭部や頭頂部で、側頭部や後頭部などはホルモンの影響を受けにくいのが特徴です。
そのため、自毛植毛では、後頭部などの毛の組織を前頭部や頭頂部など脱毛部分に移植します。
そうすると、もともと生えている髪の毛と一緒に髪が成長していくのです。自分の髪の毛を移植するため、一度定着すれば特別なメンテナンスなどは必要ありません。
ここがポイント!
また、自分の髪の毛ですので、拒絶反応が少なく失敗のリスクが少ない植毛と言えます。
人工毛植毛
人工毛植毛は、ナイロンやポリエステルといった合成繊維でできた人工の髪の毛を、特殊な針を使って頭皮に植え付ける手術です。
すでに完成している人工の毛を移植するため、すぐに増毛が実感でき、広範囲にわたって植毛が可能というメリットがあります。
注意!
しかし、頭皮に異物を埋め込むため、拒絶反応などの副作用が出やすいのがデメリットです。
人工毛植毛はおすすめできない
前述したように、人工毛植毛は合成繊維を頭皮に移植する手術のため、体の免疫システムにより拒絶反応が起きやすいのが大きなリスクです。
また、人工毛はそれ以上成長することがないので、毛根に汚れが溜まると、自毛のように髪の毛が汚れを押し出してくれず、毛穴に雑菌が発生しやすいというデメリットもあります。
注意!
また、植毛した毛が切れて皮膚の中に残ってしまうと、それが原因で何らかの感染症にかかるというリスクも少なからずあるのです。
さらに、人工毛は定期的なメンテナンスが必要なため、手術してそれで終わりとはなりません。
一生メンテナンスのためにコストがかかり続けるというのも大きなデメリットです。
ここがポイント!
なお、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」によると、人工毛植毛は薄毛治療の方法としては低評価で、あまり手術すべきではないとされています。
海外では法律で人工毛植毛が禁じられているところもあるため、自毛植毛が発達した現在では、もはやおすすめできる方法とは言えません。
日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
自毛植毛のメリット
さまざまなデメリットやリスクから人工毛植毛が推奨されていない以上、植毛を検討する場合、自毛植毛一択になります。
そこで、さらに詳しく自毛植毛のメリットを見ていきましょう。
拒絶反応が少ない
第一のメリットは拒絶反応が少ないことです。
自分自身の髪の毛を移植するため、合成繊維を移植する人工毛植毛のように体が拒絶反応を示しません。
ここがポイント!
最新の植毛技術では髪の定着率が高く、手術が成功すれば短期間で薄毛の悩みが解消する可能性が高い方法です。
日本皮膚科学会も有用性を認めている
先ほど触れた日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療科ガイドライン」によると、自毛植毛はAからDまでの5段階評価でBと評価されています。
人工毛植毛は最低ランクのDですから、自毛植毛の有用性は高いと考えてよいでしょう。
AGAの影響が少ない
AGAは、男性ホルモンの一種「ジヒドロテストステロン」の影響によって、本来の髪の生え変わるサイクルが極端に短くなることが原因です。
髪の生え変わるサイクルが短いということは、毛が生えてもすぐに抜けてしまうわけです。
このジヒドロテストステロンを発生させるのが5αリダクターゼという酵素で、頭のつむじや生え際の付近に多く存在しています。そのため、前頭部や頭頂部が薄毛になりやすいのです。
一方、側頭部や後頭部はこの酵素の影響が少ないため、AGAが進行しても多くの人はこれらの部分の髪の毛は残っています。
ここがポイント!
側頭部や後頭部の髪の毛の組織を、前頭部や頭頂部の薄毛部分に移植することで、AGAの影響を受けずに薄毛が改善できる可能性があるのです。
自然な仕上がりが期待できる
植え付けた毛の組織が移植先に定着すると、元から生えていた髪の毛と同じように成長します。
ここがポイント!
また、移植した部分だけが浮いてしまうということも少なく、移植後の見た目が自然な仕上がりになるのが特徴です。
また、外傷などによって毛根が消失したというケースでも、毛根の組織を直接皮膚に移植するため、定着しさえすれば髪の毛が正常に成長していく可能性が高いです。
自毛植毛のデメリット
自毛植毛が薄毛改善に有用な方法だということはわかりました。しかし、いくつかのデメリットやリスクも存在します。それについて詳しく見ていきましょう。
薄毛の進行をストップさせるものではない
自分の髪の毛を植毛しても、AGAの進行がストップするわけではありません。
植毛した部分以外では、AGAが進行して抜け毛が現れる可能性があります。
たとえば、頭頂部に自毛を植毛しても、生え際が薄くなってしまうということは大いに考えられるのです。
また、自毛植毛は自分の髪の毛を移植するため、移植できる量に限界があります。広範囲に薄毛が見られる場合、自毛植毛だけですべてをカバーするのは困難でしょう。
何度も植毛手術を行うなどの対策はありますが、それには長い時間がかかりますし、金銭的にも肉体的にも負担が大きいのがデメリットです。
植毛した髪が抜け落ちることもある
自毛植毛が成功するかどうかは、移植した髪の毛の細胞が移植先で生命活動を続けられるかどうかが鍵を握ります。
毛の組織を採取して移植するまでに時間がかかる場合など、その間に毛の細胞の生命力が低下してしまうことも考えられるため、手術をしても細胞が頭皮に定着せず、髪が抜け落ちてしまうこともあるのです。
注意!
最近の医療技術は進歩しているため、こうしたデメリットは克服されつつありますが、100%成功するわけではないということも知っておくべきでしょう。
傷跡が残るリスク
自毛植毛の施術法にもいくつか種類がありますが、メスで頭皮を切開する方法の場合、頭皮に傷跡が残ります。そのため、植毛に成功しても傷跡が気になって髪を短くできないということも考えられるのです。
まだ元気に成長している髪の毛が多い場合は、髪を長めにするなどの対策がありますが、年を取って全体的に薄くなった時に傷跡を隠せなくなることも考えられます。
ここがポイント!
ただ、今の医療技術はメスを使わないで毛根を採取することが可能になっているため、傷跡が残るというデメリットも解消されつつあります。
高額な費用がかかる
これが自毛植毛の最大のデメリットと言って良いかもしれません。
自毛植毛は医療行為ですが、美容整形などと同じく健康保険の適用されない自由診療になるため、治療にかかる費用は全額負担しなければなりません。
現在の植毛はパンチという器具により、後頭部や側頭部など髪の毛の密集している部分から、毛の組織をくり抜くように採取する方法が一般的になっています。
ただ、この方法は移植する毛穴の1つ当たり1000円から2000円ほどの費用がかかります。
生え際が後退しているのを植毛によって補うためには、毛穴約400個分ほどの移植が必要なため、それだけでも40万円から80万円はかかるのです。
もっと薄毛が進行して、広い範囲に移植しなければならない場合は、採取する毛穴も増えるため、その何倍もの治療費がかかります。
人によっては数百万円もの治療費がかかることもあるでしょう。数ある薄毛治療の方法の中でも、最も費用が高額な方法と言えます。
ここがポイント!
ただ、一度髪の毛が定着すれば、メンテナンスの費用などはかかりませんから、一度限りの出費と考えるとコストパフォーマンスは高いとも言えるでしょう。
自毛植毛より推奨されている薄毛治療
日本皮膚科学会では、自毛植毛以上に推奨している薄毛治療法があります。
自毛植毛は、先ほど取り上げたガイドラインで5段階評価の2番目のBでしたが、最高評価のランクの治療法も存在するのです。
それが外用薬と内服薬を用いた治療法です。
外用薬による治療
薄毛治療に用いられる外用薬とは、ミノキシジルという成分を配合した薬です。
この薬は、薄毛が気になる部分や抜け毛の部分に直接塗布します。毛母細胞を刺激し、AGAの進行によって通常より早く起きる細胞死の作用を阻害し、発毛を促す方法です。
内服薬による治療
薄毛治療に用いられる内服薬は2種類あります。
- フィナステリド配合の内服薬
一つはフィナステリド配合の内服薬です。この薬には5αリダクターゼの働きを抑制する作用があり、薄毛の進行を抑えます。
- デュタステリド配合の内服薬
もう一つは、デュタステリドという成分が配合された内服薬です。フィナステリドは5αリダクターゼのII型にのみしか対応しませんでしたが、デュタステリドはI型の5αリダクターゼを抑制する効果もあるため、より高い薄毛改善の効果が期待できます。
なお、いずれの内服薬も、AGA治療の専門クリニックなど医療機関で処方してもらう必要があります。
ここがポイント!
今ではネットを使って個人輸入もできますが、質の悪い粗悪品や偽物などが横行していますし、用法や用量を誤って体に負担をかけるリスクもあるため、医師の処方以外での服用は避けた方が賢明です。
植毛の前に薄毛治療の医師に相談を
先ほどの日本皮膚科学会のガイドラインでは、最後に紹介した外用薬や内服薬による治療を受けて、それでも効果が認められない時のみに自毛植毛を考えるべきと記載されています。
植毛手術だけで薄毛の原因となるジヒドロテストステロンを抑制するのは不可能ですので、植毛は根本的な薄毛治療とはならないのです。
まだAGA専門のクリニックを受診したことがないのであれば、まずは受診して医師と治療法を相談してみるべきでしょう。
薄毛が進行してくると、焦りから一刻でも早くなんとか改善できないかと考えてしまいます。
しかし、植毛にもデメリットやリスクがあることを冷静に考え、まずはリスクの少ない薬での治療を試みるのが賢明です。
ここがポイント!
現在の薄毛治療は以前とは比べ物にならないほど進化しているため、専門の医師に相談すると最適な治療法を提案してもらえます。
まとめ
以上、植毛について詳しく見てきました。
自毛植毛と人工植毛がありますが、これからの薄毛治療では自毛植毛一択であることはお伝えした通りです。
人工毛植毛に比べてデメリットやリスクが少なく、薄毛が改善する可能性が高い方法ではありますが、それでもデメリットがゼロではありません。
かなりの費用となるため、まずはリーズナブルで効果の期待できる外用薬や内服液を試してみて、それでも効果が得られなかった場合の最終手段として考えてみてはどうでしょうか。