おしゃれに敏感な男性が増えており、カットは床屋さんではなくヘアサロン(美容室)へ通う方も多くなりました。
今や男性美容師も増え、薄毛の相談もしやすい状況になったと思います。
「最近抜け毛が気になる…」と相談したら抜け毛予防にと様々なメニューを紹介された方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか?
今回はそんな方のために、美容室で受けられる頭皮ケアの効果についてお伝えしたいと思います。
この記事を書いたのは?
東京で20年美容師をしておりましたヘアスタイリストのマリコと申します。
渋谷や原宿で勤務しておりましたが、お客様比率は学生さんよりもバリバリ働く世代の男性が多い美容室です。
薄毛の方や薄毛予備軍の方も多く、ヘアスタイルについて共に研究を重ねてきました。
同じ店舗で長年ヘアスタリストをしていたため、お客様の薄毛の進行や改善など、じっくりと身近で見させていただきました。
美容室でのメニューがどれ程効果を発揮するのか見てきたままを報告させていただきます。
一般美容室での頭皮ケアにあたるメニューはどんなものがあるのか?
まず最初に「一般美容室」についてですが、現在は美容室の細分化が進みAGAクリニックの治療ばりに薄毛対策ができる美容室もできています。
また、ヘッドスパサロンとして看板をあげていますがカットもできる(結局は美容室)というお店も存在します。
今回取り上げるのは、男性も女性も通うごく普通の美容室を「一般美容室」とさせていただきましたのでご了承ください。
さて、そのごく一般的な美容室ですが、お店によって力の入れどころである「ウリ」があります。
数年前からホスピタリティーに力を入れる美容室が増え、その結果頭皮ケアメニューを導入した店舗が増えました。
今までは毛髪に対するトリートメントメニューが主でしたが、「頭皮にもトリートメントを」という風潮が業界で巻き起こりました。
導入の内容も幅広く、頭皮ケアに重点を置く内容のメニューから、パーマやカラーに頭皮ケアできる薬剤を混ぜ、時間をかけずに頭皮ケアをする方法や、施術の途中に頭皮ケアの工程をはさんだりと実に様々です。
一般美容室でよく耳にするようになった「頭皮ケア」に分類されるキーワードをまずはご紹介します。
ヘッドスパとは?
明確な定義はなく、美容師免許がなくても行えてしまうヘッドスパ。大体はシャンプーとセットで施術されますが、シャンプーをせず頭皮マッサージする事を「ヘッドスパ」と呼んでいるお店もあるようです。
頭皮に良い効果を与えるオイルやエッセンスを塗布し、頭皮マッサージを行います。
得られる効果は
- 毛穴の詰まりを改善
- 頭皮のべたつきや匂いを改善
- 血行促進により抜け毛を減らす
- リラクゼーション効果
があげられます。
頭皮環境を健康に保つ効果があり、なおかつ髪自体にもトリートメント効果があると言われています。
しかし、使用される薬剤のセレクトによりその効果は異なります。
お店によってもその工程はまちまちで、10分程度で終了するコースや1時間たっぷり施術を受けられるコースなど実に様々です。
それもこれも「ヘッドスパ」の明確な定義がない事が原因になっています。
炭酸泉やパイウォーターとは?
炭酸泉 | 炭酸ガスを含んだ鉱泉や温泉の事を指しますが、美容室で使用されているのはお湯に炭酸を混ぜた人工炭酸泉です。炭酸泉は医療でも使われています。 |
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パイウォーター | 人の羊水とほぼ同等に精製した水分で、水分子が水道水の約3分の1という非常に細かな水です。 |
どちらも毛髪や毛穴についた汚れを除去し、血行を促進する働きがあります。
弱酸性〜中性なので、頭皮や髪の急激なPH変化を穏やかにする役割も持っているため、カラーやパーマなどに併用されることも多いです。
両方とも「水」なので、単独で使用されることもありますが、ヘッドスパに使用されることが多くなりました。こちらもやはり、頭皮環境を整える事が目的になっています。
実際どんな人が受けているの?
一般美容室では女性のお客様比率が高いので、育毛効果を狙って施述を受けている方はほとんどいらっしゃらないように感じます。
デトックス効果やリラクゼーション効果を求めている方が多く、頭皮と痛んだ髪もケアできるならと言う理由で受ける方がほとんどでしょう。
男性のお客様でも施術を希望する方はもちろんおりますが、育毛というよりは抜け毛予防として利用されている方が目立ちます。
ここがポイント!
ここではやはり、期待できる効果が「リラクゼーションからの自律神経の働きを正す事と毛穴クレンジング」という点にフォーカスされているなと肌で感じました。
ズバリAGAの改善効果はあるの?
そのような目的で利用される一般美容室での頭皮ケア。実際の効果はどうだったか?
ズバリ申し上げると、「あまり効果はなかった」です。
あくまでも私の体験の中で、ですが。
一般の美容室にある「頭皮ケア」メニューは、育毛や発毛を目標とする男性には物足りなく感じるのでは?と思います。
実際、長年通っていただいている男性のお客様で30代から徐々に薄毛になられた方がおりました。
そのお客様は頭皮ケアを毎回されていきましたが、数年続けても目に見える効果は上がらず、ある時から美容室での頭皮ケアをやめてしまいました。
それから数ヶ月経った頃、こっそりと打ち明けられたのが「専門機関に通い、本格的にAGA治療を始めた」という事でした。
そこからは正直、驚くほどぐんぐん毛量が増え、1年後には透けていた頭頂部にしっかりとした毛が生えるほど。その時、専門機関の治療はこんなに効果が出るのかと私も驚いたくらいです。
なぜ効かない?美容室での頭皮ケアメニュー
ではなぜ一般美容室での頭皮ケアは効果が出なかったのでしょうか?そのお客様から専門機関による治療内容をお聞きした上で分析してみました。
一般美容室でできるケアの内容は毛穴に詰まった汚れを落とし、マッサージによってリンパの流れを促進し、毛根に栄養分を届けやすくする事です。日常的に非常に大切な事ですが、美容室へ通う頻度を考えると全然足りないというのが素直な感想です。
プロによるスペシャルなクレンジングとマッサージを毎日受けられるのなら効果が出るかもしれませんが、なかなか現実的ではありません。
一般美容室でのケアはあくまで予防的要素が強く、発毛を促す直接的な施術であるとは言い難いでしょう。
ただし、「AGAに特化した美容室」も存在します。
こちらでのメニューは一般美容室の頭皮ケアとは全く違います。
毛穴のクレンジングの際や、頭皮ケアに使う薬剤を浸透させるマシーンなど、とにかく一般美容室では使われていない専門器具が使用されています。
また、使用される薬液(シャンプー以外でもローションやオイル、エッセンスなど)も、発毛効果が期待できる成分がふんだんに配合された「専門のケア製品」が使用されていました。
一般美容室ではAGAのお客様来店比率が少ないので、なかなかそこまで器具や製品を用意できないという背景があります。これは仕方ない事かなと思います。
一般美容室で使用されている頭皮ケアの成分解析
一般美容室で頭皮ケアとして使用されている製品は主にシャンプーやトリートメント、マッサージローションなどがあります。
ヘアミストやクリームクレンジングなど様々な呼び方がありますが、大まかに分類するとシャンプー、トリートメント類とアウトバストリートメント系(お風呂上がりにつけるようなヘアケア製品)です。
シャンプーやトリートメントは大体がノンシリコン、なおかつアミノ酸系シャンプーを使用しています。
これは頭皮や毛髪に余分な刺激を与えず優しく汚れを落とす目的で使用されます。
サロンでしか使用していないもの、又は購入できないものを使用している事が多いですが、市販品でも成分をよく調べれば質の良いものが手に入れられます。
一般美容室で頭皮ケアの際に使用されるトニックやローションの多くは、天然由来成分で構成されている商品が多いです。
植物由来のエキスやハーブ系のオイルなどがふんだんに配合され、「お肌や頭髪に優しい」のが特徴のヘアケア製品です。
それぞれに効能は違いますが、血行促進や毛穴の収斂作用、頭皮の余分な皮脂や汚れのクレンジングなどが目的とされています。
西洋医学ではハーブも薬として使用されていますが、外用薬とも言えない「化粧品分類」の製品なので、こちらに配合されているハーブなどのエキスはそこまで効果はなく、穏やかな作用なので副作用の危険性もありません。
ここがポイント!
しかし、はっきりとした発毛効果や育毛効果は感じられない事が多いでしょう。
AGA治療で使われる外用薬成分はどんなもの?
ではAGA治療で使われているシャンプーなどのヘアケア商品はどんな成分が含まれていのでしょうか?
シャンプーの洗浄成分である界面活性剤は美容室の商品と同じくノンシリコン、アミノ酸系シャンプーを使用しているところが多いです。
しかし、そのシャンプーに含有されている他の成分に特徴があります。
植物由来成分の他に、ケトコナゾールやキャピキシルなど、AGAの進行を抑え発毛を促す成分が配合されています。
トニックやローションなどには発毛を促す成分であるミノキシジルや抜け毛を予防するフィナステリドなどが配合されています。
ここがポイント!
これらは男性型脱毛症であるAGAの治療薬として使われる成分なので女性は用いません。
このことから、女性も通う一般美容室では男性のお客様比率が低いため、わざわざ入荷しない美容室が多いのでしょう。
一般美容室での頭皮ケアは無意味?
男性も女性もいらっしゃる美容室なので、AGAに特化した成分の商品やメニューが少ないのはお分りいただけたでしょうか?
どちらにも利用できて、満足度の高いメニューとなると、やはりリラクゼーション効果が高いマッサージメインのヘッドスパになります。
発毛を促す成分の取り扱いが無いとはいえ、血行不十分である事が間接的に薄毛を促進している可能性もありますし、万病の元と言われるストレスをヘッドマッサージで撃退する事もできます。
一概には「一般美容室の頭皮ケアは効かない」とは言い切れないのではないでしょうか?
ただ、明らかに薄毛が進行してしまっている男性の方はやはり専門機関を受診した方が良いでしょう。
また、専門機関でのAGA治療の内容は一般美容室で行われるメニューとは違い「治療」としてより専門的に発毛を促す施術が行われます。
ここがポイント!
薄毛治療は早期に開始した方がより効果を実感できると言われているので、カウンセリングなど受けられた方が良いでしょう。
ではどんな症状の方に美容室の「頭皮ケア」効果がでやすいのか?
ご自分の頭皮を触ってみて、弾力や柔らかさがない方は一般美容室の頭皮ケアから始められると良いでしょう。
こんな方にもおすすめ!
抜け毛をまだ実感されておらず、なんとなく頭頂部がふんわりしない、地肌がベタ付く、匂いが気になる…そんな方はおすすめです。
頭皮が硬い方は薄毛予備軍の可能性が高く、血行不良により地肌が凝り固まっている状態です。血行不良は毛根へ栄養分が行き渡らず、結果として薄毛を招く事があります。
また、頭皮の匂いやベタ付きが出ている方に多いですが、皮脂の過剰な分泌が考えられます。
毛根は油分で詰まりやすく、雑菌も増えやすいので頭皮環境が悪くなり、結果的に薄毛へと進行していく場合もあります。
いずれにせよ一般美容院室での頭皮ケアは薄毛になる前の対策として受けられると良いでしょう。
すでに薄くなってしまった場合、一般美容室のケアだけでは十分な効果は感じずらいと言えます。
ここがポイント!
美容室での頭皮ケアを月に1~2回、半年ほど続けて全く改善が見られなかった場合はクリニックへ相談に行く事をおすすめします。
どのラインからAGA専門サロンへ行くべき?
では、どのラインからAGA専門機関に行くべきかと言うと「抜け毛が明らかに増えた」と実感した時です。
鏡などで頭頂部や額を見て、地肌が透けて見え始めたら専門機関でのカウンセリングを受けた方が良いでしょう。
美容室でのケアは、あくまで予防的なものであり治療ではありません。
毛量の減少によるボリューム感の出ずらさなのか、本数は変わっていない(地肌は透けていない)けど髪が細くなったりベタ付きの影響でボリュームダウンしているのかをしっかりと見極める必要があります。
急激な毛量減少はAGAだけでなく、他の疾患の可能性もありますのでAGAクリニックや医療機関を受診しましょう。
なかなか自分で毛量の変化を感じるのが難しいという声も聞きます。
最近では医療機関以外でも遺伝子検査によってAGAになる可能性を調べる事もできます。
検査を受けてみて対策を考える方も増えてきていますのでAGA専門機関に行くのをためらってしまう方はまずそちらを試しても良いでしょう。
AGAクリニックに行く前に自分でできる対策は?
薄毛予備軍の方のために、ご自身でできる対策をお教えします。
まずは生活習慣を見直してみましょう。
不規則な生活はヘアサイクルを乱します。産毛が生えても太くならず抜け落ちてしまい、薄毛へと進行させてしまうので可能な限り規則正しい生活を心がけましょう。
- 十分な睡眠がとれているか?
- 食事の偏りはないか?
- 刺激物を過剰摂取していないか?
などです。
お酒やタバコも良いとは言えません。とは言え、我慢しすぎるのもストレスになり良くないので徐々に改善していきましょう。
そして生活改善以外にも重要なのは「正しいシャンプーの仕方」と「習慣的なセルフマッサージ」です。
どのようにすると良いかをご説明いたします。
正しいシャンプー方法とは?
毎日のことなので、ついつい手を抜きがちなシャンプー。薄毛を加速させてしまうシャンプーをしている方が意外と多いのです。この機会に正しいシャンプー方法をマスターしましょう。
- STEP1 シャンプー前はぬるま湯で十分にすすぐ
ATTENTION! 熱湯は油分を過剰に落とします。
また、頭皮にもダメージを与えるので必ずぬるま湯でしっかりとすすぎましょう。この後のシャンプーの泡立ちにも影響します。
- STEP2 適量のシャンプーで優しく泡立てる
ATTENTION! シャンプーの量は多すぎても少なすぎてもいけません。
特に少なすぎると泡立ちが不十分で汚れを落としきれず頭皮環境が悪化します。
泡立てる時の摩擦も刺激になりやすいので十分な量のシャンプーを使いましょう。
泡立て時間も長すぎは刺激になり得ます。一度ですっきりしない場合は軽く流してもう一度シャンプーで泡立てましょう。指の腹で優しく泡立てるように心がけてください。
- STEP3 ぬるま湯でしっかりとすすぐ
ATTENTION! ここが一番重要です。
泡立てはしっかりとするのに、すすぎが十分でない方が本当に多いのです。
泡立て時間は少なくとも倍以上の時間をかけて優しくゆっくりとすすぎましょう。
シャンプーのぬめりが取れるまでしっかりとすすぎますが、この時髪を引っ張らないよう細心の注意を払ってください。
- STEP4 トリートメントは状態により使用
ATTENTION! トリートメントは地肌に付くと抜け毛を進行させる場合があります。
しかし、髪が長かったり細い方は髪のもつれから抜け毛につながる事もあるので、からまりやすい部分にのみ少量つけます。
ここがポイント!
しっかり流してしまうとトリートメントの効果も無くなってしまうので、「しっかり流す」より「絶対頭皮につけない」を心がけてください。
- STEP5 タオルでやさしく水分をふき取る
ATTENTION! 決してゴシゴシと拭かないでください。
タオルを当てたら両手をしっかり広げ指先で地肌をマッサージするように拭きます。
長い方はその後毛先の方をタオルで包み、両手でプレスするように水分を拭き取りましょう。髪にもつれている箇所がある場合はここで優しくほどいておきます。
- STEP6 必ず乾かしましょう
ATTENTION! 濡れたまま寝るのは厳禁です!
地肌が濡れていると、雑菌が繁殖しやすくなります。毛根がさらに傷んでしまうので必ず乾かしてください。
また、濡れている状態は髪が非常にダメージを受けやすい状態になっているため、特に摩擦からの影響には気を付けなければなりせん。
ここがポイント!
ドライヤーで乾かすのが理想ですが、乾かしすぎや熱風(ドライヤーの距離が近すぎる)も地肌や髪に良くないです。八割ほど乾かし、その後自然乾燥にするとちょうどよく仕上がります。
このような手順です。各工程ごとに注意があり、面倒!と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、習慣付いてしまえば特に難しいことではないので、この際に覚えてしまう事をおすすめします。
マッサージは必要?
ヘッドスパやマッサージに定期的に通われている方でも、日々、ご自分でする頭皮マッサージは是非習慣として取り入れていただきたいです。
自分ですると気持ち良さも半減しますし、何より疲れる、面倒などの声を聞きますが、頭皮マッサージはとても良い影響を与えます。
頭皮には毛細血管がたくさんありますが、血行が悪くなると毛細血管の先端まで血液が行き渡りません。
そうすると毛根への栄養分の供給率が下がります。毛髪はそもそも、生命維持に関係する器官でないため、一番に影響を受けます。
毛根に栄養が届きにくくなると抜けるべき時期でない毛髪が抜けてしまい薄毛になります。
ここがポイント!
このようにヘアサイクルが乱れAGAが進行していくので、できれば1日2回を目安に頭皮マッサージをすると良いでしょう。
AGA治療の内服薬に「ミノキシジル」がありますが、血管を拡張し活性化させる効果があります。
この事から、血行が良くなると毛根に栄養を送る手助けになり、結果的に発毛を促す事につながるのが分かります。
このように、AGA治療でも重要視される「血行促進」ですから、できる限りご自分でマッサージすると良いでしょう。
女性必見!
薄毛予防以外にも、顔のリフトアップ効果が認められています。
頭皮を柔軟に保つと、頬のたるみなどが解消されます。凝り固まっていくと皮膚が徐々に伸び、どんどんたるんでしまいます。
マッサージは薄毛予防も含め、若さを保つために効果的と言えるでしょう。
生活習慣の見直しの重要性
シャンプーの仕方を変えたり、セルフマッサージを取り入れたりなど、生活習慣に良いものをどんどん取り入れていきましょう。
逆に悪い影響を与えるものは頑張って排除していけば体は答えてくれるでしょう。
短期間なら問題のない事も、長年続けてしまえば悪影響が出てくる習慣はたくさん潜んでいます。
薄毛対策とだけ考えず、ご自分の体に向き合う良いきっかけになるのではないでしょうか?日々の積み重ねの結果が、良いものになるよう今一度見直してみてはいかがでしょうか?
まとめ
一般美容室の頭皮ケアの効果について書かせていただきましたが、いかがでしたか?
「美容室メニュー=効果なし」と言う事ではなく、悩みの深刻さによってケア方法を選ぶ手助けになれたらと思っております。