薄毛は男性だけの問題ではありません。
女性でも年齢を経るごとに、頭頂部や額ぎわの薄毛が気になる人が増えてきます。20代や30代頃はそれほど気にならなかったのに、40代になって急に薄毛が気になり始める人も多くなります。
最近では、頭髪治療専門病院で治療を受ける女性も増え、その数は年々増えるという傾向があるなか、薄毛が進んでいるのに治療を受けたことがない、または治療を受ける以前に女性にも薄毛問題があることを知らないという人もいます。
今回は薄毛にすでに悩んでいる人、薄毛が気になり始めたという人、また女性にも男性と同じく薄毛の問題があることを知らないという人に向けて、女性が薄毛になる原因と脱毛の種類について解説します。
この記事を書いたのは?
今回の記事を書いたのは髪の健康を第一に考える看護師歴15年のアラフォーナースです。
若い頃にはなかった髪の薄毛が30代半ば頃より気になり始め、自分も薄毛になるのだとショックを受けたのが薄毛に興味を持ったきっかけでした。
それからというものの、薄毛や脱毛について調べて自分でできる対策を行ってきました。薄毛や脱毛はもちろん年齢によるところが多いのですが、それ以外にも食生活や日常のストレスが大きく影響していたことを実感しています。
薄毛・脱毛に対する実体験を通して、自分の髪の健康を維持することの大切さを伝えていきたいと思っています。
意外に多い!薄毛に悩んでいる女性
はじめに薄毛に関するアンケート調査を2つご紹介します。
株式会社アンテリオが行った「生活健康基礎調査」では、30代〜60代の女性が最近1年間で感じた健康に関する自覚症状のうち「薄毛」や「抜け毛」と答えた人が、全体で約14%に及んでいました。(*1)
年代別にみると
- 30代 10.7%、
- 40代 14.0%、
- 50代 14.9%
- 60代 14.2%
となり、
全体として40代になると薄毛が気になる人が増え、50代が最もその数が多いことが分かります。
もう1つの調査は株式会社ナガセビューティーケアが2015年に行った意識調査です。そこでは薄毛が気になる20代から60代の働く女性500人にアンケートをとり、現在の薄毛の状態がどの程度かを問いました。(*2)
すると
- 「明らかに薄毛と感じている」と答えたのは21%
- 「やや薄毛だと感じている」と答えたのは49%
両方の答えを合わせると70%もの女性が程度の違いはあれ薄毛を感じていることが分かっています。
これらの調査からも、実は多くの女性が薄毛に悩んでいるということがお分かりいただけると思います。
女性の薄毛の特徴は?
薄毛にもいろいろなタイプがありますが、女性の薄毛の特徴として、頭頂部を中心に広い範囲に薄毛がみられることが挙げられます。
男性は、男性型脱毛(AGA)といって男性ホルモンや遺伝の影響による脱毛がよく知られており、前頭部や頭頂部が、さまざまなパターンを経て毛が薄くなっていきます。
ここがポイント!
そのようになる原因としては、女性が更年期を迎え男性ホルモンが次第に強く作用することが影響しているのです。
しかし、女性の薄毛はこの男性型脱毛では説明できない、頭頂部を中心に毛が薄くなる特徴がみられ、このタイプの薄毛が女性には多いといわれています。最近では、女性型脱毛(female pattern hair loss)とも呼ばれるようになってきています。
女性の薄毛の原因は?
ではなぜ女性にも薄毛問題が生じるのか、先ほども男性ホルモンの影響を受けることを挙げましたが、それらを含めて女性の薄毛の主な原因を一つずつ解説していきます。
女性の薄毛の主な原因としては
- 加齢によるホルモン環境の乱れ
- ストレスや不健康な生活習慣
- 毛髪や頭皮環境の変化
などが指摘されています。
女性の薄毛原因① 加齢によるホルモン環境の乱れ
女性は齢を重ねると、からだ全体の代謝が低下し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量も低下していきます。
このエストロゲンは女性ホルモンの1種で、髪の毛の成長をサポートし、さらに髪のハリツヤに大切なコラーゲンの産生を促します。このエストロゲンの分泌が加齢により減少することで、髪の成長をサポートする力が弱くなってしまうのです。
また、一方で女性ホルモンであるエストロゲンが減少すると、男性ホルモンのテストステロンの作用が強くなります。その結果、テストステロンと還元酵素である5a-リダクターゼが結合し、男性型脱毛の原因にもなるジヒドロテストロンとなり、薄毛や脱毛を促進させることにつながっていきます。
女性の薄毛原因② ストレスや不健康な生活習慣
過度なストレスや不健康な生活習慣も、頭皮の環境を悪化させます。
ストレスのは交感神経を刺激して、からだに緊張を強いて血液の流れを滞らせます。さらに、栄養バランスの悪い食事のよってからだに必要な栄養分がとれなくなるという状況も引き起こします。
すると、本来は血液によって頭皮に毛髪に必要な栄養分が運ばれてくるはずなのに、それができず毛の健康を保ちにくくなり、脱毛に至ってしまうのです。
さらに、喫煙ではニコチンが血管を収縮させ、髪に栄養分を運びにくくし、過度な飲酒のは肝臓に負荷をかけ髪に欠かせないタンパク質の不足を引き起こします。これらも薄毛や脱毛につながる原因といえるでしょう。
女性の薄毛原因③ 毛や頭皮環境の変化
先ほども述べたように、女性は年齢とともに毛髪の成長をサポートする女性ホルモンの分泌が30代をピークとして徐々に減っていきます。 すると、とくに頭頂部や額ぎわにかけての毛髪の成長サイクルが変化を受けて、薄毛が目立つようになります。
またこれらに頭皮の皮脂分泌量が減っていくことも、頭皮環境を変化させているともいえます。
このように頭皮環境の変化だけでなく、ある研究では「女性の毛髪は40代を過ぎると、1つの毛群から生えている平均毛髪数の減少が認められ、硬毛率の減少が顕著となり、頭頂部の薄毛化が明らかに進行していく」と指摘しています。(*3)
40代以降、硬い毛が年齢とともに減っていくことも生理的・視覚的に女性の薄毛の原因として考えれています。
女性の薄毛・脱毛症にはどんな種類があるの?
ここまで、女性の薄毛原因について詳しく説明してきました。
ここからは、薄毛や脱毛にはどのような種類があるのかご紹介します。女性の薄毛・脱毛種類は、女性型脱毛症とそれ以外の脱毛症に主に分けることができます。
女性の脱毛種類
- 女性型脱毛症
- .分娩後脱毛症
- 牽引(けんいん)性脱毛症
- ひこう性脱毛症
- 円形脱毛症
女性の脱毛種類① 女性型脱毛症
女性型脱毛症(Female pattern hair loss)は、前述のように女性の特に40代、50代以降に頭頂部の薄毛がみられる現象です。*4
女性型脱毛症は、頭頂部を中心に毛の数が減り、とくに硬い毛が少なくなっていきます。男性のように額ぎわからM字型のように脱毛が進むことはなく、分け目を中心にまだらに髪が薄くなっていきます。
原因としては女性ホルモンの分泌が年齢とともに減り、男性ホルモンとのバランスが崩れて毛髪数や硬毛が減っていくことが挙げられます。
この女性型脱毛は初期段階では気づきにくいのも特徴です。
はじめは、全体的に髪の毛が薄くなり地肌がうっすらと見られるようになる段階から、徐々に地肌が透けて見える範囲が広がっていくというプロセスがみられます。
女性の脱毛種類② 分娩後脱毛症
出産を経験した女性であれば、出産後に一時的に抜け毛が多くなったことを経験する人は多いです。
原因は、妊娠中のホルモンバランスの変化が大きく関わっています。妊娠中は、毛の成長サイクルが成長期のままとなり、抜け毛が減りますが、出産後ホルモンバランスが元の通りになることで一気に毛の成長期から休止期に変わり、抜け毛が目立つようになるのです。
出産後、毛髪の成長サイクルのバランスは一時的に不均衡になり脱毛が増えますが、半年から一年くらいでまたもとの正常な毛髪成長サイクルに戻るといわれています。
女性の脱毛種類③ 牽引(けんいん)性脱毛症
髪を強く引っ張るような髪型(ポニーテールや三つ編みなど)を長時間していたり、またエクステやヘアアイロンで同一部位の髪に刺激が強く加わるなどした場合、その部分の薄毛や脱毛が目立ってくる状態が牽引性脱毛症です。
毛に過度な負担がかかると、毛髪だけでなく、毛の周囲の頭皮にもダメージを与えます。具体的には頭皮の血液の流れが滞ることで、毛の成長サイクルをスムーズにするための酸素や栄養分が毛まで運ばれにくくなってしまう現象が起きています。
それらの結果、抜け毛が増えたり、髪の毛が切れやすくなるなどして、頭全体や分け目の薄毛が目立つようになります。
ここがポイント!
この牽引性脱毛症の対策としては、髪の毛に物理的な刺激を加えない髪型にするなどの工夫が大切です。
女性の脱毛種類④ ひこう性脱毛症
ひこう性脱毛症とは、頭皮の炎症やフケの発生で薄毛や脱毛を引き起こす状態をいいます。
さらに詳しく説明すると、頭皮の皮脂が余分に分泌されると、それが頭皮を刺激し頭皮の炎症が起きて、フケが出やすくなり、毛穴を塞ぐなどして毛髪の成長サイクルを乱してしまう状態となります。
どのような場合にひこう性脱毛症になりやすいのかというと、スナック菓子や油分の多い食事が多くなり皮脂分泌が増えるパターンや頭皮が清潔に保てていないなどの状況が重なるとよりひこう性脱毛となりやすくなるといえます。
ここがポイント!
このひこう性脱毛を予防するには、皮脂の過剰な分泌を抑えるために食事内容を見直したり、頭皮を清潔に保ち炎症やフケを生じにくくさせることが大切です。
女性の脱毛種類⑤ 円形脱毛症
円形脱毛症は、突如として一気に髪の毛が部分的、または時に全体的に円形に抜け落ちてしまう症状です。
円形脱毛症には
- 単発型(脱毛が1箇所におこる)
- 多発型(数カ所に脱毛がおこる)
- 全頭型(頭部のすべての髪が抜ける)
- 汎発型(全身の毛が抜けてしまう)
などのパターンがあります。
円形脱毛症は「自己免疫疾患」ともいわれており、自分の毛根が異物とみなされて免疫系システムがそれを攻撃することで脱毛にいたります。その原因の一つとなるのはストレスであることはよく知られていますが、特定の原因は定かでないケースも多いとされています。
ここまで女性によくみられる脱毛症の種類についてご紹介しました。
男性と同じく女性にもさまざまな脱毛のパターンがあることがお分かりいただけたと思います。女性に特徴的な女性型脱毛症や分娩後脱毛もあれば、男女共通の症状もあります。また薄毛や脱毛が生じる原因もさまざまです。
ここがポイント!
もし、薄毛や脱毛など気になる症状があれば、自己判断せずに、早めに医師に相談することも大切といえるでしょう。
まとめ
薄毛や脱毛の問題は、女性でも年齢やほかの原因によって、誰でも起こりうることであるにも関わらず多くの人が、これまであまり気にしなかった、対策をしてこなかったということが問題でもあります。
実は薄毛症状が進行しているのに、気づかずに対策が手遅れであることも起こりえます。
ここがポイント!
そうならないように、日頃から自分の髪の状態をチェックする習慣をつけましょう。
そして、薄毛や脱毛につながるような習慣を見直し、髪の健康を少しでも維持できるような生活に変えていくことが大切です。